フィリピンでは去年から豚肉の価格が高騰しており、その値上がり率はこの6ヵ月で+50%にも達しています。政府が首都圏について価格凍結(price freeze)措置を命ずるような事態になっています。
なぜ豚肉の価格が高くなるのか?
フィリピンの豚肉の国内自給率は約90%で、本来はそのほとんどを国内生産でまかなえるはずです。しかし、2019年以降フィリピン各地でアフリカ豚熱(African Swine Fiver; ASF)の感染が発生しており、感染拡大防止のための屠殺は勿論のこと、発生した州から各州への肉の流通を禁止するなどの政治的措置が取られています。
フィリピンは豚肉の輸入割合を2倍に増やして対応していますが、感染した豚の処理が不適切に行われてASFが蔓延してしまうなど抑え込みができておらず、豚肉の価格高騰が続いています。
年末にはクリスマス需要も相まって1キロ400ペソ(約880円)まで値段があがり、ドゥテルテ大統領は、首都圏において、2月1日より60日間、豚肉を1キログラム当り270ペソ(約600円)、LIEMPO(豚のベリー)を同300ペソ(約660円)に価格凍結する大統領令を発令しました。

キロ880円ということは、100gで88円?十分安いんじゃ…

フィリピン人の月収は3万円ほど。
日本人の感覚と比較するには、「0」を1つ付け足して考えないといけません。もし豚肉が100g880円だったら…食べ盛りの子どもが大勢いる家庭も多いです。
鶏肉に需要が流れ、こちらも価格凍結が発令中
豚肉が高いとなると、人々は代替食料に流れていきます。その代表格が鶏肉です。
鶏肉についても豚肉と同様に値段上昇に歯止めがかからない状態になり、価格凍結の大統領令が出されました。首都圏では、皮つき1羽が160ペソ(350円)を上限に取引されます。
なお、牛肉は豚肉より価格が高く、フィリピンの食料自給率も低めです。
インフレ率は4パーセント超に
日本の2020年のインフレ率は+2.8%だそうですが、この豚肉問題に派生する食料品の価格高騰とガソリン燃料の価格上昇により、フィリピンのインフレ率(inflation rate)は1月+4.2%に加速しています。
各食料品のインフレ率は、肉類(+17.1%)、野菜(+21.2%)、果物(+9%)となっており、食料品の高騰が深刻です。
マニラでは肉の販売を取りやめる業者が多数
養豚場から高い値段で仕入れた肉を凍結された値段で販売すると、加工・流通業者は赤字の危機に曝されます。この大統領令が出ているのは首都圏エリアのみのため、より高く売れる他のエリアに流通が流れてしまい、いくつかの市場では肉そのものが売っていない、買いたくても肉が入手できない、という事態を招いています。
もしあなたの食卓にまだ豚肉と鶏肉が並ぶのなら、あなたはラッキーなのだと思いなさい。
つまり、こういうことです。
1,あなたはこの価格高騰の中でもそれらを買う金銭的余裕がある。
2,あなたは供給不足になる前にそれを買い求めることができた。
コロナ禍で失業者が増えているところにこの食料の打撃はつらいですね。
フィリピンの失業率は、政府発表値は現在7%前後ですが、世論調査機関(SWS)による数値は30%弱となっています。
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