【SDGsフィリピン】海水だけで灯るサステイナブルランプ

現地ニュース

日本では昨今SDGsが盛んに取り上げられ、エコロジカルな取り組みが各所で行われていますが、8年前の2014年、フィリピンではすでに同様の取り組みを行っている一人のフィリピン人女性がいました。

アイサ・ミへノ(Aisa Mijeno)さんは、兄のラファエルさんとともに海水だけで灯るランプを開発し、SALtという会社を立ち上げたフィリピン人女性です。SALtは、Sustainable Alternative Lighting(持続可能な代替照明)の頭文字になっています。

フィリピンには6000以上もの島々がありますが、離島や農村部といった都市部から離れた場所への電力供給は今なおフィリピンが抱える課題の一つとなっています。所得に対して電気代の高いフィリピンでは、電気が通っていても、電気代を捻出するだけの余裕がない人たちも一定数おり、このような人々は、灯油ランプに頼る生活を強いられています。貧しい農村部の人々は灯油ランプの燃料を調達するために、何時間もかけてガソリンスタンドへ出向かねばならず、このような生活はフィリピンの人々の肉体的・家計的な負担になるだけでなく、地球環境の面においても、二酸化炭素ガスが排出されることによる温暖化の促進という問題を抱えています。

この2つの問題を同時に化学の力で解決に導こうとしたのがミヘノ兄妹です。

海に囲まれたフィリピンでは、塩は安価で手に入れやすい物質です。デ・ラ・サール大学工学部の講師であるアイサさんは、化学電池を応用したSALtランプを開発します。SALtランプは燃料を必要としません。なんとティースプーン2杯の塩とコップ一杯の水、あるいは海水だけで明かりが灯り、毎日塩水を入れ替えて充電するだけで約8時間ランプを使用することができます。半年に一度、中の電極となっている金属棒を交換することで繰り返し使うことができます。

また、SALtランプは明かりだけでなく、本体についているUSBの差込口から携帯などの電子機器を充電することもできるようにデザインされています。

アイサさんは、貧しい人々に明かりを届けるため、農村部には安価でこのSALtランプを提供し、一般販売においても、一つ売れるごとに一つを貧困層に届けられるようにしました。

エコだけではなく、貧困問題にも切り込んだこの取り組みが評価され、韓国や日本、ASEANなど、SALtランプは国内外から数々の賞を受賞しています。また、アメリカの大学に招待されて講演を行ったり、APECのCEOサミットでは、オバマ元大統領とセッションも行っています。

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