日本人でも慣用句の誤用やいい間違い、間違った敬語表現が取り沙汰されることがありますが、それはアメリカでも一緒。実は文法的に間違いだけれど、一般に浸透してしまっている表現があります。
アメリカの公共放送局が「よく聞く誤用法」を視聴者に公募し、ランキングにしたものがありますよ。トップ10を一緒に見ていきましょう。
https://www.npr.org/2014/12/30/372495062/the-npr-grammar-hall-of-shame-opens-with-i-and-me
10. Not answering “thank you” with “you’re welcome.”
「ありがとう」に対して「どういたしまして」と返さない
これは文法の問題というよりはエチケットの問題と思われそうですが、”Thank you”に対して、
“No problem”(問題ないよ)
“Sure”(もちろん)
“Thank you”(ありがとう)
と言った返しをする人がいて、気になる、という声がありました。
9. “graduated college” instead of “graduated from college.”
graduateのあとのfromが抜けてしまう
大学を卒業する(した)と言いたい時には、graduate from 〇〇と表現しますが、このfromが抜けてしまう人が多いようです。最近では、このfrom無しの表現も市民権を得つつあるようですが…。
8.The chronic misuse of “lay” and “lie.”
LayとLieを区別できない
「横たわる」と「横たえる」がごっちゃになるのは、日本人英語学習者でもあるあるではないでしょうか。活用も含めて紛らわしいこの上ない動詞です。
7.Referring to anything as “very unique.”
「とてもユニーク」は意味が通らない
ユニークという言葉自体が「唯一無二」という意味なので、それにとてもを付けることができません。分かりやすい他の例でいうと「もっとも最高」という表現は、「最高」の時点で既に一番程度が高いので、それに「もっとも」を付けることはできないのと同じです。形容詞をveryで修飾できるかどうか判断するためには、その形容詞がgradable(程度が変えられる)なのか、non-gradable(程度が変えられない)のかを見極める必要があります。
簡単な単語を例に挙げると
very hot = boiling
very cold = freezing
このように、boilingやfreezingには既に「程度が酷い」という意味が含まれています。このような単語にveryを付け足すことはできません。ユニークも同じです。
6.Claiming something “begs the question.” You almost always mean it “raises the question.”
raises the questionの意味でbegs the questionを使う
raises the question は「問題を提起する」と言う意味があります。
対して、begs the question は「問題をはぐらかす」という意味です。ただ、この誤用が使われ過ぎて、実際にこのbegs the questionにも「問題を提起する」という意味が載るようになっています。
5.Ongoing confusion over “who” vs. “whom.”
WhoとWhomをごっちゃにする
文法的にはwho/whomの位置の人物が、主格なのか目的格なのかでどちらを使うかが決まります。
今はこのような表現はしませんが、簡単に言うと以下が文法的には正しいということですね。
Whom do you like? (あなたが誰を好きなのですか?) whomはlikeの目的語を指している。
Who likes her? (誰が彼女のことを好きなのですか) whoは主語を指している。
現代の日本における英語教育では、whomは古い英語だからほとんど使われないと習いますが、そもそもアメリカ人でもこれを正しく使えていない人は多いようです。
4.”Literally.”
「文字通り」を連発する
これはアメリカの若者言葉と言えますね、literallyは本来「文字通り」という意味ですが、「文字通り」ではない時にも「マジで」「ガチで」のような強調の意味合いでやたらと使われるようになっています。人によってはこの用法にモヤっとする方もいるようです。
3.Using the word “impacted” as a synonym for “affected.”
affectedとimpactedを同じ意味で使う
impactの意味は「衝撃を与える」、affectの意味は「影響を及ぼす」です。
そもそも言葉自体が似ているような気はしますが、スマホで考えてみると分かりやすいかもしれません。スマホを落とす行為が「衝撃を与える」、それによって生じるOSの不具合や画面割れなどの変化が「影響を与える」になりそうですね。
2.”So.” Please, please stop starting sentences with that word!
Soから文を始める
英語の文章では、文頭に and, but, so を持ってくるのは bad form (不作法・良くないこと)と考えられています。soは等位接続詞と呼ばれる品詞で文と文を接続する接着剤の役割を持っているため、いきなり接着剤から始めるとおかしい、ということですね。
1.”I” and “me” — the most-complained-about misuse.
Iとmeをごっちゃにする
公募でもっとも多かった誤用法は、基本とも言える代名詞。
“she and me” instead of “she and I”? Or, even worse, “her and me”?
とあるように、本来”She and I” (彼女と私は)と言うべきところを”She and me” と言ってしまう人が多いようです。いわゆる「ミーはね、…」で始まるルー語的用法ですね。
これは私も中東の方とやりとりした時に経験があります。主語にMeをよく使う方でした。
これらはネイティブによくある誤用ですので、皆さんも耳にすることがあるかもしれませんね。
ただ、一つ断っておきたい点は、言葉は日々進化しているということです。過去は「間違い」だったのに、皆が使うようになって、それがいつしか「正しくなった」ということは言葉の世界ではよく起こります。日本語で「ギャップ萌え」「よき~」「忖度」「ぴえん」など、色々な言葉が時に話題になり市民権を得ているように、英語でも”literally”や”lit”など新たな用法が登場して、言葉は変化し続けています。